ある程度の年齢になってくると、これまでなかった体の変化に気づくことがあります。
そのひとつが「パンツに便がついてしまう」「お尻のあたりが湿っぽく感じる」といった、肛門まわりの違和感です。
トイレでしっかり拭いたつもりなのに、しばらくして下着を見ると黒っぽい汚れが……。
「ちゃんと拭いたはずなのに」と戸惑う方も多いでしょう。実はこれは、中高年に比較的よくある悩みなのです。
ふき残し?それとも軽度の便漏れ?
肛門まわりの不快感にはいくつかの原因があります。
単なる「ふき残し」と思っていても、実は以下のような身体の変化や状態が影響していることが少なくありません。
- 便が柔らかすぎて完全に出きらず残るケースもあれば、逆に硬めで粘着質な便が肛門に張りついてしまい、排出しきれないというケースもあります。
どちらの場合も、肛門周囲に便が残ってしまい、時間がたって下着を汚す原因になります。 - 痔(特に内痔核や肛門周囲の腫れ)によってふき取りづらくなる
- 加齢により肛門の締まりが弱くなり、微量の便がにじみ出る
- 排便後に十分なケアができない環境(外出先や職場など)
医学的には、これらは「軽度の便漏れ(便失禁)」に分類されます。
自覚があっても「年齢のせい」「恥ずかしくて言えない」と我慢している人が多く、表面化しづらい問題です。
実は珍しくない中高年の“あるある”
日本大腸肛門病学会の調査によれば、成人の10人に1人以上が軽度の便漏れを経験しているとのこと。
特に60代以降ではさらに増加し、男女問わず「お尻の拭きにくさ」「下着の汚れ」に悩む声が多く聞かれます。
にもかかわらず、他人に相談しにくい話題のため、誰もが「自分だけかも」と感じてしまいがち。
けれど実際には、多くの中高年が日常生活の中で密かに対処している問題なのです。
生活の中でできる対策とは?
便のにじみやふき残しは、ちょっとした工夫でかなり軽減することが可能です。
次のような対策を実践してみてください。
- 肛門まわりのケア:痔がある人は市販の軟膏で炎症を抑え、刺激の少ないおしりふきを活用しましょう。
- 便の状態を整える:水分や食物繊維を適度にとり、便がゆるくなりすぎないよう注意。整腸剤の使用も効果的です。
- 携帯アイテムの活用:外出時にはウェットティッシュや簡易ウォシュレットを携帯し、必要に応じてケアを。
- 下着の工夫:パンツの内側にガーゼをあてたり、薄型のパッドを使えば安心感が得られます。
また、排便後に「もう一度ふき直す」習慣をつけるだけでも、汚れの軽減につながります。
職場などでそれが難しい場合は、トイレットペーパーを折って軽く挟むという方法もあります。
医療機関に相談してもいい
もし便のにじみや肛門の不快感が続くようなら、肛門科や消化器内科への受診も検討しましょう。
軽度の痔や、肛門括約筋のゆるみであれば、薬やリハビリ的な運動で改善が期待できます。
恥ずかしいと思うかもしれませんが、医師は日常的にそうした相談を受けています。
一人で抱え込まず、健康的な生活のために適切な対応をとることが大切です。
まとめ:恥ずかしいけれど、誰にでも起こりうる
年齢とともに体の機能が少しずつ変化していくのは自然なことです。
パンツの汚れや肛門の違和感は、決して特別な症状ではありません。
「自分だけではない」と知ることで、気持ちが軽くなることもあります。
できることから対策を取り入れ、安心して過ごせる毎日を目指しましょう。
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