高齢の家族を自宅で介護する場合、気になるのが「毎月どれくらいの費用がかかるのか」という点です。介護は短期で終わるものではなく、数年単位で続くケースも珍しくありません。そこで今回は、在宅介護の平均費用、月5万円以内で収めるための工夫、そして利用できる制度について整理します。
在宅介護の平均費用
厚生労働省の調査によると、在宅介護の平均月額は約8万円〜10万円。これは介護サービスの利用料に加え、紙おむつや食費、光熱費の増加分などを含んだ金額です。
ただし、この金額は要介護度や利用するサービスの種類によって大きく変動します。例えば、
・要介護1:デイサービス週1〜2回+訪問介護週1回 → 月3〜5万円程度
・要介護3:デイサービス週3回+訪問介護週2回 → 月6〜8万円程度
・要介護5:毎日の訪問介護+頻繁な訪問看護 → 月10万円以上になるケースも
費用の内訳
- 訪問介護(ホームヘルパー):1回30分〜60分で約300〜1,000円(介護保険1割負担時)
- デイサービス:1日利用で約700〜1,500円(食費別)
- 訪問看護:1回約500〜1,000円
- 福祉用具レンタル(ベッド、車いす等):月500〜1,500円程度
- 紙おむつ代:月3,000〜5,000円
- 光熱費増加分:月2,000〜4,000円
※金額は厚生労働省「介護給付費等実態調査」(令和5年度)および全国社会福祉協議会等の資料を参考にした全国平均値です。要介護度や加算、地域差により実際の額は前後します。
介護者の負担と費用の関係
費用を抑えようとサービス利用を減らすと、その分介護者の身体的・精神的負担が増えます。特に働きながら介護をしている場合、無理をすると体調を崩したり、仕事に支障をきたすこともあります。「お金を節約する=介護者が疲弊する」という悪循環を避けるため、最低限のサービスは確保することが重要です。
月5万円以内に抑える工夫
在宅介護の費用を抑えるには、サービス選びと利用回数の調整が鍵です。
- デイサービスとショートステイを組み合わせる
デイサービスで日中の介護を任せ、短期間のショートステイを利用すれば、家族の休息時間が確保できます。 - 訪問介護は必要な時間だけ利用
掃除や調理など家族で可能な部分は自分たちで行い、専門的な介助や入浴介助など必要な場面だけ依頼します。 - 福祉用具はレンタル優先
購入よりレンタルの方が初期費用が安く済みますし、状態に合わせた交換も容易です。 - 自治体の紙おむつ支給制度を利用
支給額や条件は市区町村で異なるため、事前に役所で確認しましょう。
実際に5万円以内で収めた事例
厚生労働省の「介護給付費等実態調査」によれば、要介護1〜2程度の高齢者で、デイサービス週2回+訪問介護週1回+福祉用具レンタルという組み合わせの場合、介護保険自己負担は月約2万5,000円〜3万円程度に収まる例が多く見られます。
さらに自治体の紙おむつ支給制度(月2,000〜3,000円相当)や配食サービス助成を活用すれば、総額5万円以内で介護を継続できるケースもあります。実際、東京都や大阪府の一部自治体が公表しているモデルケースでも、この条件での在宅介護費用は月4万5,000〜5万円程度に抑えられています。
活用できる制度
- 介護保険制度:65歳以上または特定疾病の40歳以上が対象。1〜3割負担でサービス利用可能。
- 高額介護サービス費制度:月額負担上限を超えた分が払い戻されます。所得区分によって上限額は異なります。
- 自治体独自の助成:紙おむつ支給、住宅改修補助、配食サービスなど。
制度利用の失敗例と注意点
制度は知っていても、申請のタイミングを逃すと使えなくなるケースがあります。例えば、住宅改修補助は工事前に申請が必要です。また、高額介護サービス費は申請しないと自動的に払い戻されないため、注意が必要です。
長期介護を見据えた家計計画
介護は平均4〜5年続くとされ、10年以上に及ぶ場合もあります。短期的な節約だけでなく、長期的な資金計画が欠かせません。貯蓄の取り崩しや年金だけで対応できるか、早めに見通しを立てておくことが重要です。
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在宅介護は、家族にとって大きな責任と負担を伴います。しかし、制度や支援を上手に利用することで、経済的な負担を軽減しながら質の高い介護を続けることができます。月5万円以内という目標も、工夫次第で十分可能です。
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