“売らないフリマ”のすすめ──譲って得する人間関係

“売らないフリマ”のすすめ──譲って得する人間関係 高齢者の健康と暮らし

最近は、不要になった物を手軽に売れる時代になりました。メルカリ、ジモティー、ラクマなど、スマホ一つで出品し、お金に換えることができます。

でも、その一方で、「売らないフリマ」という考え方が静かに広がっています。つまり、モノをお金に変えるのではなく、“誰かに譲る”ことに価値を見出す動きです。

譲ることの気持ちよさ

高齢になると、家の中にはモノが溢れてきます。「もったいなくて捨てられない」「思い出がある」「まだ使える」といった理由から、なかなか手放せない人も多いでしょう。

そんなとき、「売る」よりも「譲る」ことを選ぶと、不思議と気持ちが軽くなることがあります。誰かに使ってもらえる。しかも、その人の顔が見える。そうした実感があると、単なる処分ではなく“バトンを渡す”感覚になるのです。

特に、近所の人や友人、地域のつながりの中で譲った場合、「ありがとう」の一言が嬉しかったり、そこから新たな交流が生まれたりします。

「売らない」ことで得られるもの

モノを売ればお金が入ります。でも、100円や200円の利益のために、梱包や発送、トラブル対応に追われることも少なくありません。

一方で、譲ることには金銭的な利益はなくても、心の満足感や、人との関係性という“目に見えない財産”が得られます。

たとえば、「古い鍋を近所にあげたら、お返しに漬物をもらった」とか、「孫の服を譲ったら、いつの間にか近所の子が遊びに来るようになった」といった話も耳にします。

物を通じた交流は、シニアにとって心の張り合いにもなります。無理に知り合いを増やさなくても、自然に会話や関係が生まれるのです。

どうやって“譲る”か?

譲り先がすぐに思いつかないという人もいるかもしれません。でも、工夫次第でいろんな場が活用できます。

  • 町内会の掲示板に「ご自由にお持ちください」と貼る
  • スーパーの掲示板や地域センターの情報コーナーを活用
  • 知り合いに声をかける(「欲しい人いないかな?」と聞くだけでもOK)
  • ジモティーなどのアプリで「無料でお譲りします」と投稿する

大切なのは、見返りを求めないことです。押しつけにならないよう、「もし使ってもらえるなら…」という気持ちが、相手にとっても心地よく伝わります。

実際にあった心あたたまる体験

私自身にも、印象的な“譲り”の経験があります。

あるとき、仕事先で仲良くなった年上の方に、乗らなくなった原付バイクを差し上げたことがありました。壊れていて、エンジンには穴も開いていた状態。とても売り物にはなりませんでした。

ところがその方は、かつてエンジニアとして活躍していた人物で、あっという間にバイクを再生し、ふたたび元気に走らせてしまったのです。

それがきっかけで一層親しくなり、後日、その方の家庭菜園で採れた野菜を山ほどいただきました。仕事を辞めた今でも、たまに連絡を取り合う仲です。

「年を取ってから友達はできにくい」と言われることがありますが、私の場合はむしろ逆で、同世代の人と新たに仲良くなることがあります。それも、モノのやり取りがきっかけになることが多いのです。

モノを介した、心のやり取り

“売らないフリマ”は、お金の代わりに「ありがとう」が返ってくる世界です。それは、単なるお得ではない、“人の温かさ”を感じられる体験です。

年齢を重ねるほど、モノよりも人の気持ちに敏感になります。だからこそ、「もらってくれる人がいてよかった」と思える行動は、ちょっとした幸福感をくれるのです。

売らずに譲る──あなたの家に眠る品物が、誰かの日常をちょっと豊かにするかもしれません。

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