眠っていたはずなのに、夜中の2時、3時に目が覚める。
「もう一度寝なきゃ」と思っても、なぜか心がざわざわして眠れない。胸がモヤモヤして、わけもなく不安になる──。
そんな経験、ありませんか?
実はこれは、年齢を重ねた多くの方に共通する“夜の心の現象”です。そしてそれは、病気でも怠けでもなく、とても自然なことなのです。
■ 年齢とともに変わる「夜の過ごし方」
高齢になると、睡眠が浅くなったり、早く目が覚めるようになるのは珍しくありません。これは体内時計(サーカディアンリズム)の自然な変化によるものです。
問題は、「目が覚めたときに感じる不安」や「胸のざわめき」が、本人にも説明できない形で心に残ることです。
たとえば──
- 何か悪いことが起こりそうな気がする
- 自分が役に立たない存在のように感じる
- 遠くの物音や風の音が怖く聞こえる
- “このまま朝が来なかったら…”と急に怖くなる
こうした気持ちは、日中にはあまり感じないのに、夜になると大きくなるものです。
■ 不安を追い払おうとしない
ここで大切なのは、「この不安をどうにかしよう」と無理に考え込まないことです。
不安は、まるで夜の霧のようなもの。強くかき消そうとすると、かえって濃くなってしまいます。
代わりにこう考えてみてください。
──「ああ、また来たな。不安な時間だ。でも、しばらくすれば消えていくものだから、無理に追い払わなくてもいいや。」
この“受け入れの姿勢”が、不安のピークを和らげてくれます。
■ 夜中にできる小さなこと
不安で眠れない夜には、無理に寝ようとせず、小さな行動を取り入れてみましょう。
- ・白湯を飲む:身体がほっと落ち着きます。
- ・静かな音楽を流す:できれば歌詞のないものを。
- ・ゆっくりと深呼吸:1回10秒かけて吐くのがポイント。
- ・手帳やノートに「不安」を書いてみる:頭の外に出すことで、心が整理されます。
灯りはまぶしすぎない間接照明にすると、気持ちも落ち着きやすくなります。
■ 誰かに話すことで軽くなることも
「夜中に不安になるなんて、恥ずかしい」「言ったら笑われそう」と思うかもしれません。でも、実は同じように感じている人はたくさんいます。
信頼できる友人や家族、あるいはかかりつけのお医者さんに、ちょっと打ち明けてみてください。「そんなこと、私もあるよ」という言葉に救われることもあります。
■ 「このまま死んだら」と思う夜に
眠る前になると、「もし今夜このまま死んだら…」とふと思うことがあります。
怖いというよりも、「まだ片づけていないことがある」「あれもこれも始末がついていない」「残された人に迷惑をかけたくない」──そんな思いが浮かんできて、不安で目を閉じられなくなるのです。
死ぬことが怖いのではなく、死んだあとのことを心配してしまう。
それは、きっと自分勝手に生きてこなかった人の証です。誰かのことを思い、今もなお気を配ろうとする、静かなやさしさだと思います。
だからその気持ちを、ただ「不安」として押し込めるのではなく、「そろそろ準備を始めていい合図なんだな」と受け止めてみてもいいのかもしれません。
小さなことからでかまいません。引き出しを一つ整理する。思いをメモに書いておく。そんな始まりが、夜の不安を少しずつほどいてくれることもあります。
■ 眠れない夜にできること
夜中に目が覚め、不安になることは、年齢や性格に関係なく誰にでも起こりうることです。
それは決して弱さではなく、人生の静かな時間を生きている証でもあります。
大切なのは、自分を責めないこと。不安になった夜は、無理に眠ろうとせず、自分をそっといたわってあげましょう。
明けない夜はありません。
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