「終活」という言葉が一般的になった昨今、自分の人生をどう締めくくるかを考える人が増えています。エンディングノート、遺言、身の回りの整理…。その中でも興味深いのが、男女でまったく異なる“終活の動機”です。
ある調査では、女性は「家族に迷惑をかけたくない」から、男性は「見られたくないものがある」から終活を始めるという、鮮やかな対比が見えてきました。
■ 男性が恐れるのは「バレたくない過去」
週刊女性PRIMEが行った50〜90代男性へのアンケートでは、「終活で妻に知られたくない物」として以下のような項目が上位を占めていました。
- スマホやパソコンの検索履歴
- ギャンブルの収支記録
- 昔の恋人に関する手紙や写真
- 性的なデータやグッズ(アダルト動画、雑誌、DVD など)
「死んだあとにスマホを見られて“こんなもの見てたの?”なんて言われたら、情けないしみっともない」(60代男性)
「昔の風俗のレシート、思い出のつもりで取っておいたけど……やっぱり捨てました」(70代男性)
男性にとっての終活は、“体裁を整えること”であり、“恥を片づけること”でもあるのです。
■ 女性は「誰かの負担になりたくない」と考える
70代の主婦・冴子さんはこう話します。
「通帳も保険証もいろんなところにあって、私がいなくなったら娘たちが困るでしょ? だから、全部まとめて一冊にして渡してあるの。服も半分以上は捨てたのよ、迷惑になるから」
60代女性は、スマホの写真を整理しながらこう言いました。
「スマホの中、ちょっと変な写真もあるけど、恥ずかしいからじゃなくて……見ても娘たち困るでしょ。“これどうすんの?”って戸惑わせるのも悪いから、消しておこうと思って」
女性の終活は、まさに「他人のための後始末」であり、「静かな優しさの表れ」と言えるのです。
■ デジタル時代に際立つ性差
現代の終活で大きな課題となっているのが「デジタル遺品」です。スマホやパソコンに残された履歴やSNS、写真、パスワードの扱いは、もはや無視できないテーマになりました。
男性は「見られたくないデータをいかに処分するか」に悩み、
女性は「遺族が困らずに整理できるように整える」ことを気にかけます。
そこには、「過去を隠したい男性」と「未来のために整えたい女性」のくっきりとした対比があります。
■ なぜ、こんなにも違うのか?
この違いには、育ってきた社会構造や、世代ごとの価値観が深く関わっています。
- 男性は「社会的な立場」や「外聞」を重んじて生きてきたため、“死後の印象”を気にする。
- 女性は「家族の支え手」として生きてきたため、“死後の迷惑”を避けようと努める。
つまり、終活とはその人の人生観そのものが反映された行動なのです。
■ 終活とは「死の準備」ではなく「愛の表現」
終活とは単なる“身辺整理”ではありません。それは人生の総括であり、「自分らしさをどう最後まで貫くか」という、静かな意志の表れでもあります。
恥ずかしいものを葬りたい男性の願いも、
誰かが困らぬように配慮する女性の思いも、
どちらも“人生の最後をどう見せたいか”という、美意識に満ちています。
■ 結びにかえて
人は誰しも、何かしらの思いを抱えて生きてきました。終活とは、それらをそっとたたみ、静かに締めくくる時間でもあります。
自分らしい終活の形は、誰かと比べるものではなく、自分自身と向き合う時間の中で育まれていくものです。
“見られたくない過去”をそっと閉じることも、
“迷惑をかけたくない未来”を整えることも、
どちらも、その人らしい優しさのかたちに違いありません。

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