小さな会社ほど得する|補助金&助成金の実践書を読んで【書評】

スモールビジネス おとなの副業と手続き帳

補助金・助成金という言葉に、どこか他人事のような印象を持っている人は少なくない。特に個人事業主や小規模企業の経営者、あるいはフリーランスにとって、「自分には縁がない」「申請は難しそう」という先入観は根強い。

本書『小さな会社ほど得する 事業者・フリーランスのためのすごい補助金&助成金のもらい方』(岡本圭司 著)は、そうした思い込みを一つひとつ丁寧に崩しながら、「小さいからこそ得られる」という逆転の視点を提示してくれる。

著者の岡本氏自身が、補助金を活用してきた小規模事業者のひとりであり、その体験から得られたリアルなノウハウが全編にわたって紹介される。単なる制度の羅列ではなく、どうすれば補助金を「活かせるか」という視点で書かれている点が特徴的だ。

補助金は“もらう”ものではなく“活かす”もの

本書の冒頭で語られる、「補助金は“延命装置”ではない。“事業の成長のための燃料”だ」という言葉が強く印象に残る。経営が苦しいから申請するという姿勢ではなく、事業をよりよくするために使うべきという考え方が一貫している。

小規模事業者持続化補助金、事業再構築補助金、雇用調整助成金、IT導入補助金など、多くの制度が紹介されているが、単なる概要紹介にとどまらず、どのような事業者に適しているか、どんな失敗例があるかまで解説されている。

事例に学ぶ「等身大の申請」

注目すべきは、実際に採択された事業の事例が豊富に掲載されている点だ。たとえば、美容室が新メニュー導入のために設備を整備した例や、カフェがテイクアウト対応のために改装費用を補助金でまかなった例など、具体的で親しみやすい。

これらの事例は、「こんな小さな規模でも申請できるんだ」と読者の背中を押してくれる。成功例ばかりでなく、「申請書の内容が抽象的すぎて通らなかった」「提出書類が不備だった」という失敗例も率直に紹介されており、信頼感がある。

「自分で申請する」ことの意義

本書では行政書士など専門家の力を借りる選択肢も紹介しつつ、基本的には「自分でやる」ことを勧めている。その理由として、「補助金の申請を通じて、自分の事業を客観視し、強みや課題を再認識できる」という点を挙げている。

つまり、補助金申請は単なる資金獲得手段ではなく、事業の見直しと成長戦略の再構築に直結する行為なのだ。この視点は、補助金本にありがちな“お金をもらうテクニック本”とは一線を画すポイントだろう。

情報の鮮度と読者への注意喚起

補助金制度は年度ごとに要件が変更されるため、当然ながら本書の情報も“書かれた時点”のものだ。著者もその点を繰り返し注意喚起しており、「必ず最新の募集要項を確認してほしい」と強調している。

本書は「申請のコツ」や「審査で重視される視点」などの“変わりにくい本質”に重点を置いており、その点では今後も活用可能な指南書といえる。

まとめ──「小さな事業者」にこそ読んでほしい

全体として、本書は“補助金とは縁がない”と感じていた読者にとって、目から鱗が落ちるような内容となっている。制度の紹介にとどまらず、補助金を通じて自分の事業とどう向き合うかを教えてくれる、実践的かつ思想的なビジネス書だ。

フリーランス、小規模企業の経営者、あるいはこれから開業を考えている人にとって、本書は補助金という制度を知るための入口であると同時に、事業を育てていく上での強い武器になるだろう。

補助金は「もらえるか」ではなく「活かせるか」。その本質を、実感として伝えてくれる一冊である。

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