やがて私たちは、誰かの手を借りなければ生きていけない時期を迎えます。介護が必要になったとき、どんな態度で周囲と関わるか──それによって、自分の人生の終盤が穏やかにも、孤独にもなるのです。
「高齢者の問題行動」と聞くと、認知症や老化が原因と思われがちですが、実は“性格”や“現役時代のふるまい”がそのまま老いに表れているケースも少なくありません。
よく見られる「問題行動」とは?
- 暴言・命令口調:「何やってる!」「早くやれ」と怒鳴る。
- 感謝を示さない:世話しても無言、または「当たり前」と思っている。
- 無遠慮な依頼:呼びつけては「何もしてくれない」と不満を言う。
- ハラスメント:性的な言動やなれなれしい接触で職員を困らせる。
- 不衛生行動:排泄の拒否や、部屋を汚すなど。
これらは介護者の心を確実にすり減らし、時に「虐待のきっかけ」にさえなります。問題行動の裏には、認知症や精神的な混乱もありますが、多くは“他者への配慮を忘れた態度”が引き金となっています。
現場のリアルな声
ある介護職員はこう語ります。
「『ありがとう』を一言でも言ってくれる利用者さんには、自然と笑顔で接したくなります。でも、命令口調で当たり前のように扱われると、心が閉じてしまうんです」
介護する側も、感情のある一人の人間。労いもなく、常に否定される環境で、最善の介護を続けるのは非常に困難です。
介護者に憎まれないための5つの心得
1.「ありがとう」は毎日の薬
一番簡単で一番効果のある魔法の言葉。「ありがとう」が言える人は、自然と人に大切にされます。
2.「昔は偉かった」は今に通用しない
過去の肩書きや経歴を振りかざしても、介護者には通じません。今、どう接するかがすべてです。
3.「助けてもらう覚悟」を受け入れる
自立心は大切ですが、無理をして怒り出すのは逆効果。「お願いね」と素直に頼れる人が愛されます。
4.相手の疲労に目を向ける
介護職も、家族も、毎日懸命に支えています。「自分だけが大変」と思わない想像力が必要です。
5.「この人と一緒にいたい」と思わせる
柔らかい言葉、穏やかな笑顔、思いやりのある一言。それだけで周囲との関係性はまったく変わります。
あなたは大丈夫? 心構えチェック
- ✅ 世話をしてくれた人に、毎回お礼を言っていますか?
- ✅ できないことは素直に「お願い」と伝えていますか?
- ✅ 相手の表情や疲れを気にしたことはありますか?
- ✅ 昔の肩書きを理由に人に命令していませんか?
- ✅ 小さなことでも「ありがとう」「助かった」と言えていますか?
一つでも「いいえ」があった方は、今から意識を変えるだけで、将来大きな違いになります。
おわりに──「どう老いるか」は自分次第
介護は「してもらう」ものですが、関係は一方通行ではありません。「感謝できる人」「穏やかに頼れる人」には、周囲も自然と優しくなります。
「この人なら助けたい」と思われる存在になること──それが、人生の終盤を心地よく生きるための秘訣ではないでしょうか。
老いは避けられませんが、嫌われるかどうかは自分次第です。
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