2025年、日本の「コメ」をめぐる状況が急変しています。
スーパーや飲食店で目にするお米の価格が、ここにきて大きく上がっています。
「いつの間にこんなに高くなったのか」と驚いた方も多いのではないでしょうか。
ところが、この米価高騰の原因について一部メディアでは、JA(農協)が在庫を絞って価格をつり上げているというような報道が出ています。まるでJAが“悪者”のように。
しかし、本当にそれだけが原因なのでしょうか?
本記事では、2025年の米価高騰の本当の背景と、小泉進次郎農水相による「作況指数の廃止」決定の意味をわかりやすくお伝えします。
■ そもそも、なぜ米価が上がっているのか?
まず最初に、今年の米価が高騰した本当の理由を整理しましょう。
- 2024年の猛暑・干ばつの影響
- 異常気象により全国的にコメの生育が悪化。
- 特に東日本では高温障害で収量が大幅に落ちた。
- 作付面積の縮小
- 長年続く“米離れ”や高齢化により、農家の作付けが減少傾向。
- 実需に対して供給が足りず、価格が上昇。
- 備蓄・出荷調整のタイミング
- JAや大手商社が在庫を保有する中で、出荷のタイミングが市場に影響。
- これをもって「JAが米価をつり上げている」との批判が一部で出ている。
つまり、高騰の主な要因は「天候」「供給減」「需給バランスの変化」であり、JAが単独で操作できるような状況ではありません。
■ 小泉農水相の「作況指数廃止」が混乱に拍車をかけた
2025年6月16日、小泉進次郎農林水産大臣は、「作況指数」の発表を今年(2025年)産のコメから廃止すると正式に発表しました。
🔸作況指数とは?
- 「平年=100」を基準として、その年のコメの収穫状況を全国的に示す指標。
- たとえば「作況指数95」であれば、「やや不作」と評価されてきた。
🔸なぜ廃止?
- 小泉農水相は「農家の実感とズレている」という理由を挙げました。
- 実際の流通では1.8mmふるい以上の玄米が主流なのに、指標は1.7mm基準であったため、実態に合っていないと指摘されていた。
- また、気候変動により「30年平均と比較して“平年並み”」という判断自体が現実と乖離していたという問題も。
🔸しかし、問題も…
- 作況指数は、農家や市場関係者が「今年は豊作か不作か」を判断する大事な指標でした。
- それが廃止されると、全国的な作柄の共通認識がなくなり、誰がどれだけ収穫できたのかが見えなくなる。
これは、情報が“ブラックボックス化”することを意味し、消費者・流通業者・農家にとって不安材料になります。
■ 「JAが悪い」は本当か?
メディアや一部の政治家は、「JAが米を隠している」「出荷を遅らせて儲けている」といった論調で責任を押し付ける傾向があります。
しかし、先に述べたように、
- 不作の影響、
- 作付面積の縮小、
- 政府統計の廃止、
- 価格形成メカニズムの不在、
など、複合的な要因が絡んでおり、JAをスケープゴートにするのは本質を見誤る議論だと言えます。
■ 本来必要だった“市場のバランサー”がない
現在の日本では、米の価格を調整する市場的なメカニズムがほとんど存在しません。
- 作況指数 → 廃止
- 米の先物取引市場 → 2021年に農水省が本上場を拒否し、事実上消滅
つまり、価格の予測・リスク分散・透明な価格形成という“市場の役割”が機能していないのです。
その結果、米価が急騰しても、
- どれくらいの不作だったのか?
- どれくらい在庫があるのか?
- 価格は妥当なのか?
が、誰にも判断できない状態になってしまっています。
■ では、どうすればいいのか?
このような混乱を避けるためには、以下のような制度的な見直しが不可欠です。
課題 | 解決策 |
---|---|
作況が見えない | AIや衛星を活用しつつも、簡潔で共通理解できる作況指標の再整備が必要 |
市場価格が不安定 | 先物取引など、価格予測・調整機能を担う制度の再構築が急務 |
情報の非対称性 | JAや農水省だけでなく、消費者や事業者にも正確な情報が届く仕組みを作ること |
■ おわりに
お米は日本の主食であり、私たちの日常生活と切っても切り離せない存在です。
だからこそ、価格がどう決まるのか、なぜ上がるのかをきちんと理解できる社会であるべきです。
JAを悪者にして終わらせるのではなく、**「見える市場」「開かれたデータ」**を取り戻すことこそが、真の改革ではないでしょうか。
小泉農水相の打ち出した「作況指数廃止」は、その第一歩になるのか。それとも、“価格の不透明化”を加速させるだけなのか──。
今後の議論に注目していきたいと思います。
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