要介護認定を上げるメリット・デメリットとお金の違い

車いすに乗った高齢者を押す介護士と少し離れて見守る家族、そして家のフィギュアの人形" 高齢者のお金と制度

高齢者やその家族にとって、介護保険制度は生活を支える大切な仕組みです。その中でも「要介護認定の区分」がどのように決まるかによって、利用できる介護サービスの内容や金額に大きな差が出てきます。
今回は、要介護認定を上げることのメリット・デメリット、そしてお金にどんな違いが生まれるのかを具体例とともに整理します。

要介護認定とは?

介護保険制度では、心身の状態に応じて7つの区分が設定されています。

  • 要支援1・2
  • 要介護1~5

この区分によって、利用できる介護サービスの範囲や限度額(いくらまで保険を使えるか)が決まります。

認定が上がるメリット

① 利用できるサービス量が増える

要介護度が上がると、介護保険で利用できる「支給限度額」が大きくなります。2024年改定後の基準額(1単位=約10円換算)は以下のとおりです。

区分支給限度額(単位)支給限度額(円換算)
要介護116,765単位約167,650円
要介護219,705単位約197,050円
要介護327,048単位約270,480円
要介護430,938単位約309,380円
要介護536,217単位約362,170円

例えば要介護2から要介護3に上がると、月あたり7万円以上サービスを追加利用できる枠が広がります。

② 自己負担割合は変わらない

介護保険サービスの自己負担は、原則1割(所得に応じて2~3割)。認定が上がっても割合は同じなので、使える枠が増える分だけ得になるケースが多いです。

認定が上がるデメリット

① 心身状態の悪化を意味する

認定が上がるということは、それだけ介護が必要な状態になっているということです。ご本人や家族にとっては、必ずしも喜ばしいことではありません。

② ケアプランの見直しが必要

介護度が上がると、それまでのケアプランを大幅に変更する必要があります。デイサービスの回数が増えたり、ヘルパーの訪問時間を長くするなど、生活スタイルも変化します。

③ 自己負担額が増えることも

自己負担は割合で決まりますが、総額が大きくなるほど自己負担額も増えることになります。

例:
・要介護1(限度額167,650円)の場合、1割負担 → 最大16,765円
・要介護3(限度額270,480円)の場合、1割負担 → 最大27,048円

必要に応じてサービスをフル活用すると、自己負担額も月1万円ほど増える可能性があります。

具体例:デイサービス利用

仮に、要介護1の方が週2回デイサービスを利用していたとします。1回あたり6,000円(自己負担600円)、月8回で4,800円。

ところが、要介護3に上がり、週4回利用するようになると…1か月の利用料は19,200円(自己負担)。

枠が広がった分、生活は楽になりますが、お金の負担は確実に増えます。

まとめ

  • 要介護度が上がると、介護サービスの利用枠が大きく広がる
  • 自己負担割合は変わらないが、総額が増えるため支払う金額は高くなる
  • 生活の支えは増えるが、心身の悪化を意味するため心理的には複雑

要介護認定を上げることは「お金の得・損」だけでは測れません。ご本人の生活の質(QOL)を守るために必要かどうか、ケアマネジャーと相談しながら判断するのが大切です。

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