「可愛い孫の笑顔をみんなに見てもらいたい」──その気持ちは、とてもよくわかります。家族の誕生日や運動会、七五三など、思い出の一枚をSNSに投稿することが当たり前の時代になりました。
しかし今、その何気ない一枚が、AIを使った“ディープフェイク”という新しい犯罪の材料にされてしまう可能性があることをご存知でしょうか?
ディープフェイクとは何か?
「ディープフェイク(deepfake)」とは、AI技術を使って他人の顔を合成し、まるで本物のような動画や画像を作る技術のことです。もともとは映画やエンタメ業界で活用されていた技術ですが、今では一般人でも簡単に操作できるアプリが登場し、悪用が拡大しています。
特に問題視されているのが、他人の顔をポルノ映像などに合成する“性的ディープフェイク”と呼ばれるものです。本人が全く関与していないにもかかわらず、見る人には「まるで本人が出演しているかのよう」に見えてしまいます。名誉や人間関係を壊すだけでなく、精神的な被害は計り知れません。
孫の写真が“素材”にされる時代
「うちは家族だけの非公開アカウントだから大丈夫」「見るのは知り合いだけ」──そう思っていても、実際には一度ネットに出た画像は、誰かに保存されたり、転送されたりしてしまえば制御できなくなります。
最近では、子どもや未成年を標的にした“児童ディープフェイク”が問題化しており、警察も捜査を強化しています。AI技術は年齢も関係なく処理できるため、乳幼児から中高生まで、誰でも被害対象になりうるのです。
また、悪質な加害者の中には、祖父母や親が投稿した写真からターゲットを選んでいるケースもあります。「善意の投稿」が被害を招くきっかけになるという事実を、私たちはもっと深刻に受け止めなければなりません。
高齢者こそ、ネット写真の危険を知ってほしい
スマートフォンを使いこなし、FacebookやInstagramで発信するシニア層が増えています。便利な反面、「ネットに写真を出す=全世界に公開すること」という感覚を持っていない人も多く、悪意ある第三者にとっては格好の標的になりがちです。
投稿前に「この写真、本当にネットに出して大丈夫か?」と一度立ち止まる習慣が、家族を守る第一歩です。特に孫の写真については、以下の点に注意してください:
- 顔がはっきり写っている写真は投稿しない
- 制服や学校名、地域が特定される背景を避ける
- 投稿はLINEなど閉じたアプリで
- 「鍵付きアカウント」でも油断しない
“知らなかった”では済まされない時代に
ディープフェイクという言葉を初めて聞いた方も多いかもしれません。ですが今や、誰もがその被害者にも、知らず知らず加害者にもなりうる時代です。
軽い気持ちで撮った写真、楽しそうに笑っている家族の姿──それらが歪められて拡散されたとき、後悔してももう遅いのです。
今や写真は「個人情報」以上に重たい“人格そのもの”といえる時代です。かわいいからこそ、守る。見せたいからこそ、共有の場を選ぶ。そのひと工夫が、大切な人を守る最大の盾になるのです。
「私は関係ない」ではなく、「私が守る」という意識が、これからのネット社会に必要とされています。

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