豆苗の“豆”は食べられるのか?──台所で芽に迷うひととき

豆苗の豆から伸びる芽と白い根を接写した写真 高齢者の健康と暮らし

スーパーで豆苗を手に取ると、鮮やかな緑の芽とともに、根元にしっかりとした豆が付いているのが目に入ります。台所で包丁を入れながら「この豆は食べられるのだろうか?」と考え込んだ経験はないでしょうか。普段は芽や茎だけを調理し、豆はそのまま捨ててしまう人が多いはずです。でも、本当にそれでいいのでしょうか。

あの豆の正体

豆苗の豆は、じつはただのエンドウ豆(グリーンピース)です。つまり有害なものではなく、食べてもまったく問題ありません。豆苗そのものが「豆から出た芽」を食べる野菜ですから、根元の豆も食用と考えて差し支えないのです。

食べられるけれど美味しいのか?

安全性の点では心配ありませんが、問題は味と食感です。芽を育てるために栄養を使い切った豆は、ぱさついて固く、甘みもほとんど残っていません。新鮮なグリーンピースのようなほくほく感は期待できず、粉っぽい口当たりにがっかりする人が多いのも事実です。

それでも「せっかくなら使い切りたい」という方は、調理法を工夫してみましょう。スープや味噌汁に加えれば、柔らかくなって食べやすくなります。カレーやシチューに混ぜ込むと、豆の存在感が和らぎ、違和感なく食べられます。細かく刻んでチャーハンに入れたり、ハンバーグの具材に混ぜ込むと、栄養も無駄なく取ることができます。

再生栽培の豆は要注意

豆苗の魅力といえば「再生栽培」です。一度刈り取ったあと、根元を水に浸しておけば、また新しい芽が伸びてきます。節約にもなり、家庭菜園感覚で楽しめるのですが、このとき根元の豆は数日間ずっと水に浸かった状態になります。そのため、雑菌やカビが発生しやすく、衛生的に食べることはおすすめできません。

再収穫する場合は、芽や茎を中心に利用しましょう。豆の部分は役目を終えた「栄養タンク」と割り切り、安全のために処分するのが無難です。

豆をどう活かすかの工夫

豆をそのまま食べるのは口に合わないという人でも、工夫次第で利用方法はあります。たとえば、乾燥させてから観葉植物の鉢に混ぜて土の栄養にする、コンポストに入れて肥料化するなど、食べる以外の形で“再利用”する手段です。

また、子どもや孫と一緒に「豆から芽が出る様子を観察する教材」として使うのも一案です。水に浸して窓辺に置けば数日で芽が伸び、自然の仕組みを学ぶきっかけになります。無理に食べなくても、家庭で楽しめる役割を担ってくれるのです。

結論:食べられるが、無理して食べなくてもよい

まとめると、豆苗の豆は食べても安全だが、美味しいとは言えないという存在です。調理法を工夫すれば口にできるけれど、どうしても味や食感が気になる場合は無理をする必要はありません。芽や茎を美味しくいただき、豆は栄養を使い果たした「役目を終えた部分」として片付けるのも自然な選択です。

大切なのは「どうするのが自分に合っているか」を決めること。食卓で一粒の豆を見つめながら、食べるか捨てるか、あるいは別の形で活かすか──台所にはそんな小さな選択肢が隠れているのです。

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