転倒・骨折が怖い高齢者へ──3つの予防の知恵と安心の暮らし方

ジャージにスニーカー姿でアスファルトの上を歩く高齢者の足元を後ろから撮影した写真 高齢者の健康と暮らし

年齢を重ねると、多くの方が「転んで骨折したらどうしよう」という不安を抱きます。
若い頃なら軽いケガで済んだ転倒も、高齢になると骨折や入院につながりやすく、そこから生活の質が大きく下がってしまうこともあります。
今回は、高齢者に多い転倒の背景と、日常で実践できる予防の知恵を3つご紹介します。

なぜ高齢者は転びやすいのか

加齢とともに筋力が落ち、歩幅が小さくなると、ちょっとした段差や絨毯の端でもつまずきやすくなります。
また、視力や聴力の低下、血圧の変動によるふらつき、服薬の影響なども転倒のリスクを高めます。
「自分はまだ大丈夫」と思っていても、体の変化は少しずつ進んでいるため、油断は禁物です。

さらに、転倒が怖くて外出を控えると、運動不足になり筋力がますます低下する──という悪循環に陥ることもあります。
一度骨折して長期入院すると、そのまま寝たきりになるリスクも高まります。
特に大腿骨の骨折は、退院後の生活の質や寿命にまで影響することが知られています。
転倒予防は、単なるケガ防止にとどまらず、「自立した生活を続けるための第一歩」といえるのです。

1.足腰を鍛える──毎日の小さな積み重ね

転倒予防の基本は「下半身の筋力」です。特に太ももとお尻の筋肉は歩行を安定させるカギになります。
毎日の中で無理なくできる運動を取り入れましょう。

  • 椅子に座ったまま、足を交互に10回上げ下げする
  • 壁に手をついて、かかとの上げ下げを10回繰り返す
  • 朝晩にストレッチで足首を回す

これらは特別な器具を使わずにできる簡単な運動です。
大切なのは「毎日少しずつ続けること」。一度に長時間やろうとせず、生活の中に自然に組み込むのがおすすめです。

「続けるのが苦手」という方は、歯磨きやテレビのニュースを見る時間など、既にある習慣とセットにしてしまうと楽です。
例えば「歯を磨いたら足首を回す」「天気予報の間にかかと上げをする」といった工夫です。
習慣に紐づけることで、無理なく体を動かす習慣が身についていきます。

2.住まいを整える──転びにくい環境づくり

どれほど体を鍛えても、家の中が危険なままでは転倒のリスクは減りません。
家庭内での転倒事故は非常に多く、特に「夜間のトイレ」「浴室」「階段」で起こりやすいとされています。

チェックしておきたいポイントは次のとおりです。

  • 廊下や階段に手すりを設置する
  • カーペットやマットの端を滑り止めで固定する
  • コード類は壁際にまとめておく
  • 夜間の照明を足元灯やセンサーライトで補う

「ちょっと不便だけど慣れているから大丈夫」と思っている環境が、実は転倒の大きな原因になっていることもあります。
暮らしを見直すことは、安心を増やす第一歩です。

3.「安心の工夫」を取り入れる──不安を軽くする備え

転倒への不安を完全に消すことはできません。大切なのは「転んでも大事に至らないための工夫」を持つことです。
それが結果として安心感につながり、外出や活動の意欲も保てます。

  • 室内では滑りにくい靴下やスリッパを使う
  • 杖やシルバーカーを「必要になってから」ではなく早めに取り入れる
  • 緊急時に連絡できるよう、携帯電話や見守りサービスを利用する

「転ばないように」だけでなく、「もし転んでも助けを呼べる」という安心感が、不安を和らげてくれます。
結果的に外出や活動を続けやすくなり、健康の維持にもつながります。

まとめ

転倒・骨折の不安は、高齢者にとって最も身近で切実な問題のひとつです。
しかし、毎日の運動で足腰を鍛え、住まいを整え、安心の工夫を取り入れることで、その不安は確実に軽くできます。

「転んでから後悔する」のではなく、「転ばない暮らし」を先に準備すること。
今日できる小さな一歩が、明日の安心を支えてくれるのです。

転倒予防は単なる安全対策ではなく、「これからの人生を自分らしく歩き続けるための投資」です。
怖さにとらわれるのではなく、「備えがあるから大丈夫」と思える暮らしを整えていきましょう。

コメント