軽度認知障害(MCI):増加する高齢者の問題とその対応方法

軽度認知障害 高齢者の健康と暮らし

軽度認知障害(MCI)とは──高齢者の認知機能の変化に注目

最近、高齢者の認知機能の低下が社会的な問題として取り上げられるようになっています。特に注目されているのが、軽度認知障害(MCI)です。MCIは認知症の前段階にあたり、健常な状態と認知症の中間に位置づけられます。

記憶力の低下や集中力の散漫といった症状が見られることがありますが、日常生活に大きな支障は生じません。ただし、放置すると認知症に進行するリスクがあるため、早期発見と適切な対応が非常に重要とされています。

MCIの増加とその背景

日本では高齢化が進行しており、それに伴ってMCIを抱える高齢者の数も増加傾向にあります。2022年には約612万人がMCIとされ、2042年には約632万人に達すると予測されています。

高齢者全体の約3割が認知症またはMCIを抱えると見込まれており、MCIの段階でいかに早く対処できるかが今後の大きな課題となっています。

MCIの原因とリスク要因

MCIの原因は加齢だけでなく、生活習慣や遺伝的要因も深く関係しています。高血圧、糖尿病、運動不足、過度の飲酒といった生活習慣病がリスクを高めることが分かっており、慢性的なストレスも脳に悪影響を及ぼします。

また、家族に認知症の人がいる場合や、過去に脳卒中や頭部外傷を経験した人も、MCIのリスクが高いとされています。

MCIの症状と診断

主な症状は記憶力の低下や注意力の散漫です。たとえば、最近の出来事を忘れやすくなったり、日常の活動に支障をきたすようになることがあります。

しかし、生活全体に支障が出るわけではないため、本人も周囲も気づきにくいのが現実です。診断には問診や認知機能テストが行われ、必要に応じてMRIやCT検査なども実施されます。

MCIが進行することもある

MCIのうち毎年10~15%が認知症へ進行するとされ、特にアルツハイマー型認知症が多く見られます。一方で、すべてのMCIが進行するわけではなく、症状が安定したり、改善するケースもあります。

研究では、MCIの16~41%が正常な認知機能に戻る可能性があるとされています。だからこそ、早期対応が重要なのです。

医師による治療と対策

MCIの治療は生活習慣の見直しが中心です。医師からは、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレスの軽減などが提案されます。

抗酸化物質を多く含む野菜や果物、魚などを積極的に摂取することが推奨されており、パズルや記憶力を鍛えるゲームなどの認知訓練も効果的です。認知症予防に効果的なアクティビティとゲームを日常に取り入れることも脳の活性化に役立ちます。

さらに近年では、MCIの初期段階でも効果が期待される新薬として「レカネマブ」や「ドナネマブ」が登場しています。

家族の支援と対応方法

MCIの兆候に気づいたら、早期に医師へ相談することが大切です。物忘れや注意力の低下が見られたら、放置せず対応することで進行を防げる可能性があります。

患者本人は不安を感じやすいため、家族は穏やかで優しい対応を心がけましょう。責めたり叱ったりするのではなく、安心感を与えるサポートが求められます。

また、孤立を防ぐために、地域活動や趣味を促すことも、認知機能の維持に役立ちます。

生活環境を整える

MCIの進行を抑えるためには、日常生活の環境整備も大切です。たとえば、重要なメモを目立つ場所に貼る、家の中を整頓する、日々のルーチンを一貫させる──こうした工夫が患者の自立を支えます。

これからに向けて

軽度認知障害(MCI)は、早い段階で気づいて行動すれば、進行をゆるやかにすることができます。生活習慣の見直しや、脳を刺激する取り組み、必要に応じた薬の活用、そして何より家族の温かい支えが、その人らしい暮らしを守る力になります。

日々の生活の中で、筋トレなどの運動習慣を取り入れることも、認知機能の維持や健康寿命の延伸に効果的です。

「年のせいだから仕方ない」と思わず、MCIのサインに耳を傾けて、できることから始めることが、これからの毎日をより前向きに過ごす鍵になるでしょう。

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