高齢者が行政サービスを受けるとき──同居・別居・世帯分離でこんなに変わる負担額

板の間の上に置かれた3世代の人物フィギュアが並んでいる様子 高齢者のお金と制度

介護保険や医療費の自己負担、自治体の福祉サービスは、本人の収入だけでなく住民票上の「世帯」の組み方で大きく変わります。ここでは、高齢者が収入のある親族と同居している場合、していない場合、そして同居していても世帯分離している場合の違いを、お金の損得という視点でわかりやすく解説します。

1──同居していて同一世帯の場合(損することが多い)

同じ住所・同じ世帯として住民票に記載されている場合、行政サービスの判定は世帯全員の所得で行われます。たとえ本人の収入が少なくても、同居している親族の所得が高ければ、負担軽減制度の対象外になることが多くなります。

  • 住民税非課税世帯と認められず、介護保険料が高い段階になる
  • 高額介護サービス費や医療費の上限が高く設定される
  • 紙おむつ支給や配食助成など自治体の福祉サービスが使えないことも

金銭的に得するケースはほとんどなく、税の扶養や健康保険の扶養でメリットがある場合を除き、負担増になる可能性が高い形です。

2──別居の場合(得することが多い)

別居で世帯も別なら、判定に使われるのは本人の世帯の所得だけです。親族の高い収入は影響しません。

  • 住民税非課税世帯になりやすく、介護保険料が最低ランクになることも
  • 高額介護サービス費や医療費の上限が下がり、自己負担が減る
  • 自治体の独自助成(紙おむつ、配食、見守り機器など)を受けやすい

注意点は、税や健康保険で扶養から外れる場合があり、扶養者側の税金や保険料が増えることです。

3──同居しているが世帯分離している場合(得と損が混ざる)

同じ住所に住んでいても、住民票上で世帯を分ければ、原則として別居と同じく本人の所得だけで判定されます。

  • 介護保険料や医療費上限が下がり、負担が軽くなることが多い
  • 自治体の助成条件を満たしやすくなる

ただし制度によっては「同住所の親族は同一世帯とみなす」というルールがあり、その場合は分離しても軽減されないことがあります。また、扶養から外れる扱いになると、扶養者側の税負担が増える可能性もあります。

4──損得の目安

住まい方・世帯形態 介護保険料 医療費・介護費上限 自治体助成 扶養控除
同居・同一世帯 高い 高い 受けにくい 扶養に入りやすい
別居 安い 安い 受けやすい 扶養に入れない場合あり
同居・世帯分離 安い場合あり 安い場合あり 受けやすい場合あり 扶養に入れない場合あり

5──まとめ

同じ家に住んでいても、住民票上で同一世帯かどうかで、高齢者が受けられる行政サービスや負担額は大きく変わります。別居や世帯分離は負担軽減につながる場合が多いですが、制度によっては効果がないこともあります。さらに税や健康保険の扶養関係が変わることで、家族側に影響が出る場合もあります。

損得を正しく判断するには、介護保険や医療制度、自治体の福祉サービスの条件を一つずつ確認することが大切です。世帯の組み方を見直すだけで、年間の負担が大きく減る可能性があります。

コメント