年齢を重ねるにつれて、人生の話題は「思い出」や「過去の栄光」、あるいは「健康不安」など、いわゆる“過去か現在”に集中しがちです。
しかし、実は「未来を妄想する力」こそが、シニア世代にとって最大のエネルギー源になるのではないか──そんな逆転の発想から、今回の記事をお届けします。
なぜ高齢者は未来を語らなくなるのか
「もう先は短いから」「今さら夢を見ても仕方がない」──こうした言葉は、多くの高齢者から自然と聞かれます。
確かに、若いころに比べて選択肢は減ったかもしれません。身体の衰えや周囲の死別などが続くと、つい“未来を描く”という行為そのものが空虚に思えることもあります。
しかし、これはある意味、脳や心の“閉店準備”に入ってしまっている状態ともいえます。
こうして心や脳が“閉店準備”に入ると、人付き合いや好奇心、チャレンジ精神も自然と縮小していきます。まるで、店じまいを目前に控えた商店が、仕入れも新商品もやめてしまうようなものです。
けれど、実際のところ“閉店”はまだ先かもしれません。シャッターを下ろすには早すぎるのです。
未来を妄想するという行為は、たとえその夢が現実にならなくても、棚を磨き直し、商品を並べ、看板をもう一度灯すことに似ています。心の店をもう一度、開けてみませんか?
未来を描かないことの弊害とは
人間の脳は、目の前の現実だけでなく「想像」や「仮定」を材料にして動きます。未来を描くことは、目標設定・計画・創造など、前向きな神経活動を活性化させるきっかけになります。
逆に言えば、未来に期待しない生活を送っていると、脳の活動は徐々に狭まり、感情も平板になりがちです。
「今日は何もなかった」と感じる日が続くのは、未来の予定や楽しみがないからかもしれません。
妄想は現実逃避ではない。生きるための力だ
ここで言う“妄想”は、単なる空想ではありません。自分の意思で描く「もうひとつの人生」「ありえる未来像」です。
たとえば──
- 来年、台湾旅行に行くとしたらどのルートを選ぶか?
- 80歳でエッセイを出版するとしたら、タイトルは?
- 10年後、自分の人生が映画になったとしたら誰が主演?
こうした問いを自分に投げかけるだけで、心は一気に“未来モード”に切り替わります。ストレスを減らし、心と体のバランスを整えるヒントとも相性がよく、心身の健やかさに直結する“妄想習慣”といえます。
妄想を“習慣”にする方法
具体的には、以下のような方法があります:
・未来日記を書く
「2026年3月5日。私は新しくできた美術館のカフェで、孫と抹茶ラテを飲んでいる」──事実かどうかは関係ありません。脳は“現在のように”反応してくれます。
・空想旅行を計画する
GoogleマップやYouTubeを使って、行ったことのない場所を調べ、ルートやホテルを選ぶ遊びです。老化で視野が狭まった脳に、新しい景色を届けることができます。
・“もしもインタビュー”をする
「もし今の自分に記者が質問したら?」という妄想で、自分のこれまでとこれからを語ってみましょう。自分への理解が深まり、意外と涙が出ることもあります。
希望は年齢の外にある
「もう歳だから」と未来を閉じてしまうことは、人生の扉を内側からロックするようなものです。
未来は、何歳でも、どんな状況でも、自由に“妄想”することができます。そしてその妄想は、確実にあなたの内側に「動きたい」「笑いたい」「書きたい」というエネルギーを生み出します。
希望とは、現実の中にあるものではなく、頭の中に生まれるもの。だからこそ──
高齢者こそ、未来を妄想せよ。
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