高齢者の幸せな生活空間とは?自由と清潔のバランスを考える

投棄されたごみ 健康と生活
"ゴキブリ御殿"になっても人は一人暮らしが続けられる…和田秀樹「認知症が進行しても残る生存能力」 一人暮らしよりはるかに清潔で豊かな老人ホーム暮らしは幸せなのか
認知症の症状が進行したら、老人ホームに入るべきか。精神科医の和田秀樹さんは「私はかつて認知症患者の高齢者を往診する仕事をしていた。あるとき、80代女性の家に派遣されると、玄関に入った途端にもう死ぬほど臭くて、床の上をゴキブリだのなんだの気持ち悪いものがはいずり回っていた。それほど認知症が進んでも意外に一人暮らしはできる...

この記事を読んで、高齢者が幸せに暮らすための生活空間についていろいろと考えさせられました。

和田秀樹さんが述べる、認知症の進行した80代女性の事例が特に印象的です。彼女はゴミやゴキブリがはびこる家に住んでいましたが、自分で食事を取りに行き、自立して生活していました。この自由さが彼女の生存本能を保ち、生きる意欲を支えていたのだと思えます。自由に動けること、自分で決断することは、人間にとって非常に重要なのだと改めて思いました。

一方で、彼女が特別養護老人ホームに入ったことで、清潔で豊かな生活が提供されたことも事実です。特養では、設備やケアが充実しており、一人暮らしよりもはるかに清潔で安全な生活が可能でした。しかし、この環境では彼女の自由は大きく制限されています。決められたスケジュールに従い、他人の管理下で生活することは、彼女の自由や自立心を奪う結果となったかもしれません。

ゴキブリだらけの家での自由な生活と、清潔だが管理された特養での生活、どちらが高齢者にとって幸せなのかは一概には言えません。それぞれにメリットとデメリットがあり、何がその人にとって幸せかは個々の価値観や状態によると思います。

自由に暮らすことで得られる精神的な満足感や自尊心は、特に高齢者にとって大切だと思います。認知症が進行しても、自分で何かをするという行為は生きがいにつながります。しかし、一方で安全や健康の面で見ると、清潔で管理された環境は高齢者の体に良い影響を与えることが多いのです。定期的な食事や入浴、健康チェックが行われることで、健康状態を維持できる可能性が高まります。

この二つの選択肢について考えると、とても複雑な気持ちになります。自由を犠牲にしてまで安全と清潔を選ぶべきなのか、それともリスクを負ってでも自由を尊重すべきなのか。どちらが本当にその人にとって幸せなのかを見極めるのは難しいことだと思うからです。

和田さんが示した事例から学ぶことは、何よりもその人の価値観や希望を尊重することの重要性です。どちらの選択が幸せかは一人ひとり異なりますが、その人が自分らしく生きるための選択を支えることが大切だと感じました。高齢者の生活空間について考える際には、清潔さや安全性だけでなく、自由や自立心も大切にしなければいけないと感じました。

認知症の進行に関しても、環境が大きな影響を与えることがわかります。和田さんが述べていたように、茨城県鹿嶋市と東京都杉並区の認知症患者の進行速度の違いは、生活環境の違いから来ています。鹿嶋市の患者さんは、農業や漁業に従事し、日常生活を続けることで認知症の進行が遅れていました。彼らは地域社会の中で見守られ、支えられている環境にありました。

一方で、杉並区の患者さんは、富裕層が多い地域に住んでいるため、認知症と診断されると家族に閉じ込められることが多く、活動が制限されることで進行が早まっていました。これにより、認知症患者にとって自由に動ける環境がいかに重要かが理解できます。

私たちが高齢者の生活空間を考える際、単に清潔さや安全性だけを重視するのではなく、彼らが自由に生活できる環境を提供することが必要だと感じました。特に認知症の進行を遅らせるためには、日常生活を続けられる環境が重要のようです。

和田さんが述べているように、日本の高齢者医療には「お節介やき」の側面があります。北欧諸国やアメリカと比較して、日本はすべての高齢者に対して延命措置を提供する姿勢を取っていますが、これは必ずしも高齢者の幸福につながるわけではありません。本人の意思や幸福を無視した延命措置が行われることもあり、この点については考え直す必要があると思います。

高齢者の幸せな生活空間を考える際には、個人の尊厳と選択を尊重することが不可欠です。和田さんの経験から、どのような環境がその人にとって最適なのかを見極め、その人が望む生活を送ることができるように支援することが大切だと学びました。

最後に、社会的なつながりも高齢者の幸福にとって重要な要素です。家族や友人、地域社会とのつながりがあることで、高齢者は安心して生活を続けることができます。社会的な孤立は認知症の進行を早めるリスクがありますので、地域社会が高齢者を見守り、支える役割を果たすことが求められます。

自由と自立が維持され、地域社会のサポートがあり、日常生活を続けることができ、清潔で安全な環境が整い、個人の尊厳と選択が尊重される場所が理想的です。和田さんの経験と洞察は、私たちが高齢者の生活環境を改善し、彼らがその人らしく生きることを支えるための貴重な教訓を提供してくれます。

和田秀樹(1957年生まれ)は、日本の精神科医、作家、教育者です。東京大学医学部を卒業後、精神医学の分野で活躍し、数多くの書籍を執筆しています。特に高齢者医療や認知症に関する専門的な知見を持ち、その著作や講演を通じて幅広い層に影響を与えています。彼の著書は、多くの読者から支持されており、高齢者の生活の質向上を目指したアドバイスを提供しています。

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