高齢者の“昼夜逆転”は本当に悪いのか?──夜型生活と健康の意外な関係

夜型生活 高齢者の健康と暮らし

高齢になると、眠れない夜が増えたり、昼間にウトウトしてしまったりと、生活リズムが乱れがちになります。「昼夜逆転」と聞くと、健康に悪いイメージを持たれる方も多いかもしれません。しかし、本当にそれは一律に“悪いこと”なのでしょうか?

高齢者に多い昼夜逆転の原因とは?

高齢者が昼夜逆転しやすい理由には、いくつかの要因があります。

  • 加齢に伴う体内時計の変化:年を重ねると、睡眠をつかさどるホルモン「メラトニン」の分泌が減少し、眠りが浅くなりがちです。
  • 日中の活動量の低下:仕事や外出が減ると身体が疲れず、夜に眠気が来にくくなります。
  • 持病や薬の影響:利尿剤などによる夜間頻尿が原因で、夜中に何度も目覚めてしまうこともあります。

また、退職後の自由な時間の使い方や、パートナーを失った後の孤独感なども、夜型生活に拍車をかけることがあります。

昼夜逆転=不健康とは限らない?

「夜型生活=健康に悪い」というイメージがありますが、最近ではその考え方も見直されつつあります。重要なのは「何時に寝るか」ではなく、「生活リズムが安定しているか」「十分な睡眠時間が確保できているか」という点です。

たとえば、午後2時に寝て夜10時に起きる人でも、毎日そのリズムが安定しており、6~8時間しっかり眠れていれば、身体の回復や脳の働きにそれほど悪影響はないという研究報告もあります。

つまり、“朝起きて夜寝る”という生活スタイルがすべての人にとって正しいわけではないのです。特に退職後の高齢者にとっては、社会的な時間に縛られないぶん、自分の自然なリズムに従いやすくなります。それを「乱れ」とみなすのではなく、「新しい生活様式」と受け入れる考え方も必要でしょう。

夜型生活の“意外なメリット”

  • 静かな時間に集中できる:夜は電話や来客も少なく、自分の世界に集中しやすい時間帯です。
  • 読書や創作活動に向いている:趣味の時間として深夜を活用している高齢者もいます。
  • 朝が弱い人にとっては無理がない:無理に早起きしようとしてストレスをためるより、自分に合った時間帯で活動するほうが精神的にも楽です。
  • インターネット利用の自由度:夜間は通信速度も安定しやすく、SNSや動画視聴にも適しています。

特に一人暮らしの高齢者にとっては、「夜こそ自分の時間」という感覚を持つことで、孤独感をやわらげる効果もあるようです。

ただし注意すべき点も

  • 日光を浴びる機会が減ると、骨粗しょう症やうつ症状のリスクが高まる
  • 家族との生活時間がずれ、孤立感が深まる
  • 食事のタイミングが乱れ、胃腸の不調を招く
  • 夜間の活動による安全面の不安(転倒リスク、防犯など)

可能であれば、午前中に少しだけでも外の光を浴びる、軽く体を動かす、電話やLINEで誰かと話すといった、「ズレすぎない夜型」を心がけるのが理想です。

「自分に合った生活リズム」を探そう

現代は24時間社会。高齢者にとっても、“昼間に寝て夜に活動”というライフスタイルは必ずしも否定されるべきものではありません。大切なのは、生活全体が安定し、心身ともに元気でいられること。

もし今の生活リズムで体調不良がないのであれば、無理に朝型に直す必要はありません。逆に、「なんとなく調子が悪い」と感じているなら、少しずつ朝の光を浴びたり、寝る時間を1時間ずつ早めたりと、自分にとって快適なリズムを探ってみましょう。

自分のペースを大切にすることは、年齢を重ねるうえでの知恵でもあります。他人と比較するのではなく、「今日も穏やかに過ごせた」と感じられる日々を目指すことが、心と体の安定につながります。

生活リズムは「自分らしさ」の表れ

高齢者の昼夜逆転は、体の変化や生活環境の影響で自然に起こることが多く、必ずしも悪いものとは限りません。「夜型=悪」と決めつけるのではなく、自分にとって心地よいスタイルを見つけ、穏やかに、楽しく生きることが大切です。

生活リズムとは「時間の使い方」であると同時に、「自分らしさの表れ」でもあります。自分の心と体の声を聞きながら、無理なく、心地よい毎日を送りましょう。

──あなたの今の生活リズムは、誰かの価値観ではなく、“自分にとっての心地よさ”を基準にできていますか?

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