若いころに鍛えた体力は、年を重ねた今も残っている。スクワットも腕立て伏せもまだ50回はできる。
それなのに、最近どうにもやる気が出ない──そんな気持ちになることはありませんか?
仕事のあと、体は動くはずなのに、帰宅するとすぐ眠ってしまう。目が覚めても何かを始める気力がわかない。
「自分はまだ動けるはずだ」と思っているからこそ、よけいにモヤモヤした気分になるのです。
こうした状態は、筋力や健康の問題というより、“気力の疲れ”と考えると納得がいくことが多いのです。
■ 年齢とともに変化する「疲れの正体」
若いころは、疲れ=体力の消耗でした。でも歳を重ねると、「頭」と「心」の疲れが大きくなってきます。
筋肉はまだある。でも、集中力や意欲、回復力が落ちてきた──そんな感覚はありませんか?
特に注意したいのが、自律神経のバランスです。年齢とともに“緊張モード(交感神経)”が優位になりやすく、リラックスする力が弱まってきます。
その結果、寝てもすっきりしない、やる気が出ない、という状態になりがちなのです。
■ 気力を回復させるためのヒント
・ゆっくりした呼吸を習慣に
気力を回復させるカギは“副交感神経”の活性化です。1日に1回、10分間だけでもいいので、ゆっくりした深呼吸や軽いストレッチを行ってみてください。朝か寝る前がおすすめです。
・「画面を見ない」静かな時間をつくる
スマホやテレビを見続けると、情報が多すぎて頭が休まりません。1日に5分でもいいので、無音で何も考えず、窓の外を眺める時間を意識的につくることが大切です。
・筋トレとは別の“リズム運動”を
ウォーキングや軽い自転車こぎなど、一定のリズムで動く運動は、脳内にセロトニンという“気力ホルモン”を生み出します。筋トレとは別の運動を取り入れることで、気力が戻ってきやすくなります。
・自分を責めない考え方に切り替える
「昔よりできない」「何もやれてない」と思う日もあるかもしれません。そんなときは、「今日も朝は起きた」「無事に帰宅できた」と、自分を少しだけ褒めてあげてください。
■ 気力がないのは、甘えじゃない
体力があっても気力が出ない日があるのは、ごく自然なことです。
むしろ、ちゃんと生きて、働いて、自分のことを振り返っているからこそ、そうした「しんどさ」を感じ取れるのです。
無理にやる気を出そうとせず、まずは自分を休ませること。
そして、気力を取り戻す小さな習慣を、ひとつでも生活の中に組み込んでみること。
それだけで、少しずつ「自分らしさ」が戻ってくるはずです。
■ 「気力疲れ」を乗り越える小さな工夫
日々の仕事が体にこたえるのはもちろんですが、それ以上にしんどいのは「気持ちがついてこない」という感覚です。
朝は起きられるし、仕事にもちゃんと行く。でも、帰ってきたらもう何もしたくない。自分のやりたいことに手をつける気力もない──。
そんな気力の枯渇を感じたら、大きなことを変えようとせず、「ひとつだけ決める」ことから始めてみてください。
たとえば、「帰宅後はソファに座る前にまず水を一杯飲む」「10分間だけ散歩する」「寝る前に音楽を1曲だけ聴く」など、ほんの小さなルールです。
それは心にリズムを作り出し、「自分を動かすスイッチ」になります。
また、週に一度だけでも、誰かと短い会話を交わすことも有効です。内容は他愛のないことでかまいません。
言葉を発することで、心が内にこもりすぎるのを防ぐ効果があります。
そして何より、「疲れている自分を受け入れる」こと。
昔のように動けなくても、すぐやる気が出なくても、それは決して怠けではありません。長年働いてきた体と心が、少し休みたがっているだけです。
がんばり続けてきた人ほど、自分の“頑張れなさ”に厳しくなりがちです。だからこそ、「今日はここまででいい」と自分に言ってあげることが、回復の第一歩なのです。
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