身寄りのない高齢者はどう備える?おひとりさま老後のリアルな対策

身寄りのない老人 高齢者の健康と暮らし

「もし自分が倒れたら、誰が助けてくれるのだろう」──そんな不安を抱える高齢者が増えています。

家族が遠方にいる、あるいはまったく身寄りがない。そうした“おひとりさま”の老後は、現代社会で決して珍しいことではありません。

今回は、身寄りのない高齢者が直面する課題と、その備えについて現実的な視点で考えてみましょう。

■ 身寄りがないと、どこで困るのか

身寄りがいない状態で最も困るのは、「判断能力が低下した時」と「亡くなった時」です。

例えば、認知症が進行し始めた時に病院や施設で「保証人が必要です」と言われても、頼れる人がいなければ手続きが進みません。

また、亡くなった後の葬儀や遺品整理、行政手続きも、誰かが担わなければなりません。

「家族がいない=社会的な“孤立無援”」にならないために、早めの対策が不可欠です。

■ 備えるために必要な3つのポイント

おひとりさまが老後に備えるには、主に以下の3つを考えておく必要があります。

① 判断能力があるうちに「任意後見契約」を

任意後見制度は、自分の判断能力がまだ十分あるうちに、将来サポートしてくれる人(後見人)を契約で決めておく制度です。

これにより、認知症などで意思表示ができなくなった場合でも、信頼できる第三者が代わりに手続きを行ってくれます。

契約には公正証書が必要で、司法書士や行政書士に依頼するケースが一般的です。

② 終末期に向けた「死後事務委任契約」

亡くなった後の手続きを誰にも任せられない場合は、「死後事務委任契約」が有効です。

これは、葬儀や埋葬、役所への届け出、公共料金の解約など、死後に必要となる一連の事務作業を生前に委託する契約です。

信頼できる個人、または法人(NPOや司法書士法人など)と結んでおくと安心です。

③ 財産や意思を伝える「遺言書」

遺言書は、法的な意味でも非常に重要な「自分の最終意思」を示す書類です。

相続人がいない場合、遺産は原則として国庫に帰属します。

誰かに遺したい場合、あるいは寄付を希望する場合などは、遺言書を公正証書で作成しておくのがベストです。

■ お金がないと契約できない?

任意後見契約や死後事務委任は、手続きに数万円〜十数万円の費用がかかる場合があります。

一見ハードルが高そうですが、最近ではNPO法人や市民後見人制度など、比較的安価で引き受けてくれる団体も増えてきました。

また、各地の社会福祉協議会が行う「日常生活自立支援事業」も、軽度の支援には役立ちます。

日常生活自立支援事業
日常生活自立支援事業について紹介しています。

■ いまからできる「小さな一歩」

準備といっても、いきなり契約を結ぶ必要はありません。まずはできることから始めましょう。

  • ・地域包括支援センターに相談してみる
  • ・後見制度のパンフレットを取り寄せる
  • ・信頼できる人が近くにいないか、見直してみる
  • ・簡単なエンディングノートを書き始める

これらの「小さな一歩」が、将来の安心に直結します。

■ 一人で生きる力は、備えることで生まれる

身寄りがないこと自体は、決して不幸ではありません。

むしろ、自分の老後に向き合い、自分で選び、備えることができるというのは、現代ならではの“強さ”とも言えるでしょう。

誰かに頼らなくても、自分の人生を最後まで尊厳を持って歩む。そのための知識と行動を、今こそ手に入れておきたいものです。

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