「自由に生きたい」「社会に縛られたくない」と願って生まれた多くのカウンターカルチャーは、本来、個人の尊厳や創造性を大切にするものでした。ヒッピー、ニューエイジ、自然派志向……そのどれもが、当初は社会の画一性や抑圧から距離を取るための“出口”でした。
ところが今、SNSやネット社会の中で、そうした自由志向の文化がいつのまにかカルト化・マルチレベルマーケティング(MLM)化する例が後を絶ちません。「自己実現」や「癒し」や「共感」を求めて入ったはずの場所が、いつしか囲い込み・支配・搾取の場になってしまう。その構造と事例を掘り下げてみます。
自由の場がカルトになるメカニズム
なぜ、自由や多様性をうたうコミュニティがカルト化するのでしょうか。それは主に以下のようなプロセスで進みます:
- 社会に馴染めない人が「別の生き方」を探す
- 同じような価値観を持つ人々とつながり、共同体ができる
- その中に強い発信者(カリスマ、リーダー)が現れる
- 思想が固定化・教義化される
- 他の価値観を拒む“閉じた世界”になる
自由を求めて集まったはずが、「共感」を盾に従属を強いられ、「救い」の名のもとに金銭や時間、精神を差し出す構造に巻き込まれるのです。
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現在も起きている事例
スピリチュアル系インフルエンサーによる高額商法
「波動を上げる」「宇宙とつながる」などを語る発信者が、30〜100万円にのぼる高額セミナーを展開。無料セミナーやSNSからLINEグループへ誘導し、選民意識と依存性を育てていきます。
ママ友コミュニティからのMLM化
自然派育児、オーガニック志向、アンチワクチン──こうした価値観から仲間を得たママたちが、doTERRAやヤングリヴィングといったオイル系MLMに移行。勧誘は「安心・安全を守る」という善意の皮を被ります。
若者向け「引き寄せ系自己啓発」
TikTokやInstagramで人気の若者が、「人生を変える」「月収100万」などをうたい、スピリチュアルと起業を融合した高額講座を販売。DMやストーリーズから誘導されるLINE登録者が搾取されていきます。
副業・自由人系アカウントの情報商材化
「ノマド」「自由な生き方」「会社に依存しない」などを売りにしたアカウントが、情報商材や「起業コンサル」に誘導。PDF教材、Zoom指導などがMLM化し、最終的には「教える側」に勧誘されていきます。
スピリチュアルと陰謀論の融合
宇宙、霊性、愛──と語っていたはずのグループが、やがてQアノンや反グローバリズムに傾き、家族や社会との断絶に至る例もあります。見えにくいが、最も深い依存と隔絶を生むタイプです。
自由と依存は紙一重
「自分らしく生きたい」と願うことは、今も昔も変わりません。けれど、不安な心、孤独な心は、“誰かに答えを委ねる”方向に傾きやすいのです。そこに信念体系とビジネスが絡むと、自由だったはずの場が「逃げられない仕組み」になっていきます。
あなたが属するグループは、以下の特徴に当てはまっていませんか?
- 批判や疑問を口にできない
- グループ外の人を「目覚めていない」と見下す
- 商品や講座が異様に高額
- 「今決断しないと損」と煽られる
- いつのまにか家族よりグループ優先になっている
これらはすべて、「依存の兆候」です。
自由の本質を取り戻すために
自由とは、「何かに従うことをやめる」だけではなく、「自分で考え、自分で決める」ことでもあります。
本当に自由な場であれば、問いかけも、離脱も、批判も許されるはずです。
カウンターカルチャーの価値を受け継ぐなら、それを「誰かの答え」や「仲間内の正義」に預けてはいけない。
それは、自由の仮面をかぶった支配に過ぎません。
あなたがもしも、今いる場所に違和感を感じたなら、
その感覚こそが「自由」のはじまりです。
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