高齢者にとって医療費の自己負担は、家計に直結する大きな問題です。2025年は「団塊の世代」がすべて後期高齢者(75歳以上)になる節目であり、医療制度の見直しが本格化します。今回は、2025年改正での医療費負担の変化、その背景、そして負担を軽減する方法を整理します。
現行制度の自己負担割合
高齢者の医療費負担は、年齢と所得によって次のように分かれます。
- 70〜74歳:原則2割負担(現役並み所得者は3割)
- 75歳以上(後期高齢者):原則1割負担(一定以上所得者は2割または3割)
現役並み所得とは、単身で年収383万円以上、夫婦で年収520万円以上などが目安です。これ以下の中所得層は、現行制度では1割負担の恩恵を受けています。
2025年改正のポイント
政府が公表している2025年改正案では、以下のような変更が見込まれます。
- 後期高齢者の2割負担対象者の拡大
現在は「一定以上所得者」のみが2割ですが、その所得基準を引き下げ、中所得層も対象に含める方向です。 - 現役並み所得者の判定基準見直し
年収基準や世帯単位での判定方法を改め、該当者が増える可能性があります。 - 外来・入院での負担上限額の見直し
高額療養費制度の自己負担限度額が引き上げられる見通しです。
これにより、これまで1割負担だった人が2割負担になるケースが増え、医療費の家計負担は確実に上昇します。
改正後の家計負担シミュレーション
仮に医療費が月2万円かかる場合、1割負担では月2,000円ですが、2割負担になると月4,000円、年間で24,000円の増加です。
慢性疾患で毎月5万円の医療費がかかる場合は、1割=5,000円/月が2割=1万円/月に倍増し、年間6万円の負担増になります。
夫婦ともに該当すれば、その倍の影響となります。
改正の背景
背景には、医療費の急増があります。厚生労働省によると、2022年度の国民医療費は約45兆円で、そのうち高齢者医療費が占める割合は5割を超えています。団塊の世代の後期高齢者入りに伴い、この割合はさらに拡大する見込みです。医療保険制度の持続可能性を確保するため、政府は負担能力のある高齢者に応分の負担を求める方針です。
負担増になる人の特徴
- 年金+パート収入などで年収200〜300万円台の世帯
- 資産はあるが年金収入は少ない人(資産も考慮される可能性)
- 夫婦ともに75歳以上で、どちらも医療を利用する頻度が高い家庭
特に「中間層」の高齢者は、これまで低負担で済んでいた医療費が2倍になる可能性があります。
自己負担を抑える方法
- 高額療養費制度の活用
医療費が高額になった場合、上限を超えた分が払い戻されます。上限額は所得区分によって異なるため、事前に確認しましょう。 - 限度額適用認定証の取得
入院時の窓口支払いを上限額までに抑えることができます。 - ジェネリック医薬品の利用
薬代を3〜5割削減できる場合があります。 - 通院間隔の調整
症状が安定していれば通院頻度を減らし、自己負担を軽減。
自治体の独自助成制度
一部自治体では、高齢者向けに独自の医療費助成を行っています。たとえば東京都の一部区市町村では、75歳以上の低所得者に外来1回あたり200円の上限を設ける制度や、重度障害者医療費助成と組み合わせて実質無料に近い仕組みを導入している例もあります。住んでいる地域の制度を確認することが重要です。
医療費を減らす生活習慣
制度の活用と同時に、医療費そのものを減らす工夫も欠かせません。
- 塩分・糖分を控えた食事で生活習慣病を予防
- 日々の軽い運動で筋力・免疫力を維持
- 定期健診を活用し、病気の早期発見・治療
こうした習慣は、長期的に見れば医療費削減につながります。
改正後に備えて今からできること
- 自分の所得区分を把握しておく
- 高額療養費制度や自治体助成の条件を調べる
- 医療費の年間予測を立て、家計に反映させる
- 必要に応じて民間医療保険や共済への加入を検討
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医療制度は一度変わると後戻りしにくく、改正の影響は長期にわたります。2025年の改正は「高齢者医療費の転換点」となる可能性が高く、自分がどの区分に該当するのか、今から確認して備えておくことが大切です。
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