親が亡くなり、実家を相続したものの誰も住む予定がない──そんな状況に直面する人は少なくありません。特に都市部から離れた地域では、空き家となる実家をどう扱うかが大きな課題になります。放置すれば荒れてしまい、固定資産税や管理の負担ばかりが重なっていきます。
私のまわりでも「結局、誰も住まない家をどうすればいいのか」と悩む声をよく耳にします。兄弟で話し合っても意見が分かれ、結論が出ないまま時間だけが過ぎるケースも多いのです。実家は単なる建物ではなく、思い出の詰まった場所だからこそ、判断を先送りにしたくなる気持ちも理解できます。
けれども、空き家のまま放置しておくと問題は確実に大きくなります。庭木が伸び放題になったり、建物が傷んで倒壊の危険が出てきたり、最悪の場合は自治体から「特定空き家」として指導を受けることもあります。そうなる前に、いくつかの選択肢を整理しておくことが大切です。
まず考えられるのは「売却」です。思い出は残したいけれど、実際に使わないなら売ってしまうのが一番負担が軽くなります。地方の不動産は買い手がつきにくいこともありますが、近年は空き家をリフォームして使いたい人や、移住希望者の需要も少しずつ出てきています。早めに不動産会社に相談して市場を把握しておくと、選択の幅が広がります。
次に「賃貸として活用する」という道もあります。古い家でもリフォームすれば貸せる場合があり、地域によっては空き家を借りたいというニーズがあるものです。借主が見つかれば、固定資産税や維持費の負担を補えるうえ、家が人に使われることで荒れるのを防ぐこともできます。
一方で「相続放棄」という選択肢も存在します。家の維持管理や売却の見込みが立たない場合、相続放棄によって負担を回避することができます。ただし相続放棄は不動産だけでなく、他の財産も含めてすべて放棄することになるので、安易に選ぶことはできません。手続きの期限も決まっているため、専門家に相談したうえで判断する必要があります。
また、兄弟姉妹で実家を相続した場合は「共有名義」になってしまうことがあります。誰かが住むならまだしも、誰も利用しないのに名義だけ共有というのは、後々の処分を難しくします。売るにしても貸すにしても全員の同意が必要になり、時間と労力がかかるからです。可能であれば、早い段階で話し合いを持ち、名義を一本化するなど整理を進めておくことが望ましいでしょう。
さらに忘れてはならないのが「相続登記」の問題です。2024年から相続登記が義務化され、放置すると過料が科される可能性も出てきました。名義変更をしないままにしておくことは、家をどう扱うにしても大きな障害になります。負担はあっても、まずは登記を済ませることが第一歩です。
実家をどうするかの判断は、家族の感情と現実の負担が交差する難しい問題です。「思い出だから残したい」という気持ちと、「管理できない」という現実の間で揺れ動くのは自然なことだと思います。それでも、何も決めずに先送りしてしまうと、負担は確実に大きくなってしまいます。
最終的にどの道を選ぶにしても、重要なのは「早めに話し合うこと」です。兄弟が集まるタイミングで少しずつ議題に出し、意見を聞き合う。それだけでも前に進みます。実家はただの不動産ではなく、家族の記憶そのものです。その扱い方をどうするかを考えることは、家族のこれからを考えることでもあります。
親から相続した実家に誰も住まない──そんな状況に直面したとき、残された選択肢はひとつではありません。売るのか、貸すのか、残すのか、あるいは手放すのか。それぞれの家族にとっての正解を探す時間は、決して無駄にはならないはずです。
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