訪問介護は、高齢者や障がいのある方の自宅を訪問し、日常生活の支援や身体介護を行うサービスです。地域のニーズが高まる中、自ら事業所を立ち上げたいと考える方も増えています。この記事では、法人をまだ設立していない段階から訪問介護事業を始めるまでの流れを、わかりやすくご説明します。
訪問介護事業は、個人事業では始められません。法人格を持つ必要があります。
- 設立可能な法人形態:株式会社、合同会社、NPO法人、一般社団法人など
- 定款に記載する目的:「訪問介護事業」「介護保険法に基づくサービス提供」などを明記
法人登記が完了したら、次は事業所の準備に入ります。
- 専有スペースの確保:居住空間とは区切られた専用の事務所が必要です
- 設備例:机・椅子・パソコン・鍵付きキャビネット・電話・FAXなど
- プライバシー保護:利用者情報や記録を安全に保管できる構造が求められます
訪問介護事業を行うには、以下のように常勤換算での人員配置が必要です。
職種 | 必要人数 | 資格要件 |
---|---|---|
管理者 | 1人(常勤) | 資格不問。サービス提供責任者との兼務可 |
サービス提供責任者 | 1人以上(常勤) | 実務者研修修了、介護福祉士など |
訪問介護員(ヘルパー) | 常勤換算2.5人以上 | 初任者研修(旧ヘルパー2級)以上 |
補足:管理者・サービス提供責任者・訪問介護員(ヘルパー)は、兼任が可能です。たとえば、常勤の管理者がサービス提供責任者と訪問介護員を兼ねることも認められています。
また、非常勤職員であっても、勤務時間に応じて「常勤換算」(FTE=Full-Time Equivalent)されます。これは人員基準(たとえば訪問介護員2.5人)を満たすために重要な考え方です。
- 週40時間勤務 → 1.0人
- 週20時間勤務 → 0.5人
- 週16時間勤務 → 0.4人
- 週10時間勤務 → 0.25人
例えば、常勤のAさんが「管理者」「サ責」「ヘルパー」を兼任し、さらに非常勤のBさん(週20時間)、Cさん(週20時間)を加えることで、訪問介護員としての常勤換算2.5人を満たすことができます。
ただし、実際の運営では「それぞれの役割を果たしているか」が重視されるため、帳票・勤務時間管理・役割分担の記録を明確にしておくことが重要です。
法人設立と人員体制が整ったら、自治体(都道府県または市町村)に「訪問介護事業者指定申請」を行います。
提出書類の例:
- 登記簿謄本(3ヶ月以内)
- 定款の写し
- 事務所の賃貸契約書
- 職員の資格証明書・雇用契約書
- 就業規則・運営規程・組織体制図
書類審査後、現地調査が行われ、問題がなければ1〜2ヶ月で「指定通知書」が交付されます。
- 契約書や重要事項説明書:利用者との契約に必要
- 介護ソフト導入:実績記録やレセプト請求(例:カイポケ、ほのぼの等)
- 国保連への接続準備:毎月10日までに請求、25日前後に入金
- 変更があれば届出必須:職員や事務所の変更、規程の変更など
- 実地指導・監査:帳票類の整備・保存を怠らない
- 利用者獲得:包括支援センター、居宅ケアマネ、医療機関への挨拶・営業
訪問介護事業は、地域社会に貢献できる有意義な仕事です。開業には一定の準備とハードルがありますが、しっかりとした計画と体制を整えれば、安定した運営も夢ではありません。このガイドが、皆さまの第一歩となることを願っています。
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